睡眠について
睡眠は人生の約3分の1を占めます。そう考えると、随分の時間を寝て過ごしているといえます。
睡眠は、もちろん体の疲れを取るために必要ですが、もっとも大事な点は脳を休めるためということでしょう。
また、睡眠中はさまざまなホルモンが分泌され、体を修復し、新陳代謝を促して、日中の活動で疲れた身体を効率よく修復します。
睡眠には免疫力を高める役割もあります。睡眠不足が続くと、自律神経のうちの交感神経が過度に緊張し、カゼをひきやすくなります。
これは白血球のうちの顆粒球が増えるため。反対に充分な睡眠は、副交感神経を優位にし、白血球のうちのリンパ球を増やします。よって、カゼもひきにくくなるのです。
睡眠は脳が休息するための大切な時間です。身体の疲れは横になって休むだけでもある程度回復できますが、脳は起きている間中働きっぱなしで、眠ることでしか休息できないのです。私たちは、心と身体の健康を保つために眠る必要があるのです。
睡眠に関係するホルモン
睡眠に関係するホルモンには、メラトニン、セロトニン、成長ホルモンが代表的です。
メラトニンは睡眠と覚醒 (昼と夜) のサイクルをコントロールするホルモンで、暗くなると出てきます。
夜、外界が暗くなるとメラトニンの分泌が高まって身体に「眠れ」と司令を出します。 「天然の睡眠薬」ともいわれています。
また体の抗酸化作用があり、これは老化防止や免疫力増強作用があるといわれています。
メラトニンの量は光の量とも関係するので、部屋の照明などをコントロールすることで量を変化させることができます。就寝前の数時間は、部屋の照明を少し暗くし、テレビやパソコンも控えましょう。
逆に、昼でも夜でも常に明るいところにいると、メラトニンの分泌量が全体的に減少してしまいます。朝や昼にしか睡眠時間が取れない人は、カーテンを閉めて、部屋をしっかり暗くすることも大切です。
成長ホルモンは、睡眠後すぐにでてきます。骨を伸ばす、筋肉を増やす、痛んだ組織を修復したり脳を休ませて、心身の疲れを回復させるはたらきがあります。
セロトニンは、睡眠している時にはほとんど出ていません。しかし、朝、光の刺激によって分泌を始めます。
光の環境
体から出るホルモンは、睡眠だけでなく光によっても影響されています。
これは、大昔の時代から、太陽とともに寝起きをしていたリズムが、人間にとってもっとも自然な生活であることを示しています。
朝、光を浴びることと、夜、暗くすることは、ホルモンの出方を調節し、体のリズムを整える働きがあります。
そのため、朝、太陽の光とともに起き、暗くなったら眠るような、大昔から行われてきた生活が理想的なのです。
朝起きたら窓をあけ、太陽の光を浴びましょう。雨のときも、起きたら電気をつけ、明るい環境に身を置きましょう。
この光の刺激によって、心身のリズムがととのい、一日を気持ちよく過ごせるようになる一歩となるのです。
明るい光をあびる、という方法は、うつ病の治療にも用いられることがあります。
仕事の都合などで昼夜逆な生活をしなければいけないような方は、朝は起きたらとにかく電気をつけて明るい環境に身を置く、反対に寝る前はカーテンを閉め、電気を消して暗くする、といった工夫をし、できるだけ自然のリズムに近い光の環境に身をおくようにしましょう。
熟睡の妨げになるもの
コーヒーや紅茶、緑茶などに多くふくまれるカフェインは、覚醒作用があるため、夜は控えめにし、カフェインの入っていない、ハーブティーなどを飲むようにしましょう。
また、牛乳のカルシウムには脳神経の興奮をおさえ、イライラを解消する働きがあります。また牛乳に含まれるトリプトファンというアミノ酸はメラトニンになり、脳に働いて眠りを誘いだしますので、お腹がすいて眠れないとき、何か飲みたいときは、牛乳をのむのもよいでしょう。
アルコールには精神の緊張をほぐす作用があり、確かに寝つきはよくなります。
けれども、アルコールは体内で2~3時間で分解されてしまい、睡眠の途中で目が覚めやすく、眠りが浅くなってしまいます。また習慣化するうちに量が増え、かえって不眠を慢性化させる原因にもなります。さらに、肝障害やアルコール依存症となる心配もあるので気をつけましょう。
たばこも、ニコチンに覚醒作用があるため、控えましょう。
食事をすると、胃腸の働きが活発になり、目がさえてきます。特に肉類は消化されるまでに時間がかかります。
ですから、夕食は就寝3~4時間前にとるのが理想的。どうしても遅い夕食になるときには、肉類は控え、腹七分目程度にしておきましょう。
また、寝る前の水分のとり過ぎにもご用心。夜中にトイレに起きることになって熟睡を妨げられます。